NORITAKE PROJECT STORY

NORITAKEプロジェクトストーリー

01

美しい発色を実現する
安全な絵具

有害物質を含まない
赤・オレンジ絵具

陶磁器の赤やオレンジの絵付けには、セレンとカドミウムを含む絵具が使用されるのが一般的です。ところが、これらは人体や環境に有害であるとして、世界的に使用が厳しく規制されている物質。ノリタケは顧客・作業者の安全や、環境への影響などに配慮して、セレンとカドミウムを全く含まない新しい絵具を開発し、これまで実現不可能と言われた世界最高レベルの鮮やかさを実現しました。

<ROSA ROSSAと朱小紋 AKE KOMON>

ノリタケが新たに開発した“安全、安心”な赤とオレンジの絵具。実現不可能とされた赤を印象的に使ったシリーズ「ROSA ROSSA」と、日本古来の伝統色"朱"を表現した「朱小紋 AKE KOMON」として誕生しました。エレガントなテーブルウェアにふさわしい、鮮やかで深みのある色あいが魅力です。

MEMBER

  • 川村 拓也TAKUYA KAWAMURA
    ノリタケカンパニーリミテド
    研究開発センター 次長
  • 熊澤 知志TOMOSHI KUMAZAWA
    ノリタケカンパニーリミテド
    研究開発センター

不可能と言われた
鮮やかな赤を作りたい。
赤に挫折し、
魅了された開発者たち
ローザロッサ(赤いバラ)、と名付けられたその食器に、軽やかにちりばめられた花びら。
その鮮やかな赤は、華やかで、深く、何より思わず惹きつけられてしまう強さがあった。
この色はまさに10年越しの開発の集大成であり、多くの開発者が挑戦し、ことごとく夢破れた苦い思い出がある。はじめて赤を見た多くの人たちは、その美しさに驚きを隠せなかった。そしてもうひとつ驚いたのは、それを見つけたのが、入社2年目の新人社員だったことである―。

まず、ノリタケと赤色絵具開発の経緯を説明しておこう。
陶磁器の絵付は、700℃を超える高温で焼成されるため、一般的に、高温に強い金属や金属酸化物である顔料と粉末ガラスを混ぜた専用の絵具が使われる。中でも鮮やかな赤やオレンジの絵具は、発色のために人体や環境に有害なセレンとカドミウムを含むものが使われていた。これらは焼成すれば溶出しないとされていたが、製造する過程においては、働く人や周辺環境に悪影響をもたらすものだ。

ノリタケは、2010年より、有害物質を一切排除した赤・オレンジ絵具の開発に着手した。そもそも公害がニュースとなる随分前から、大気汚染対策にいち早く取り組んでいた企業だけに、その行動は早かった。しかし―。
「思った以上に難航して、担当者が次々と変わっていきました」と話すのは、研究開発センターの川村拓也。

セレンを含まず赤を出すには、金と銀を使えばいい、ということは経験的にも分かっていた。金と銀をナノレベルまで小さくすると、青と緑の光は吸収され、赤色の光だけが反射するためだ。ところが、どう作っても青みが強く残り、紫に近いような赤になってしまう。

デザイナーの求めているのは、セレンでしか出せなかった鮮やかな赤だ。「そんなものは不可能ではないか」という思いがよぎる中、あらゆる可能性を探り、アプローチを変えてみるがことごとく失敗。開発の中止が議題にあがることも一度や二度ではなく、このプロジェクトは完全に暗礁に乗り上げていた。

そんな頃、担当となった川村は「こうなった以上、トライ&エラーではできない」と悟り始めていた。「一からやり直そう。根本から分析し直していこう」―。

そこで、抜擢されたのが、新入社員の熊澤知志だった。顔料だけでなく、すべての成分を見直すことになり、社内の粉体デザインGや大学の研究室などに頻繁に顔を出した。その時のことを熊澤は「最新の機器を使って、研究者たちに交じり、試行錯誤するのはとても刺激的でした。社内では自由にやらせてもらえたので、やりやすかった」と振りかえる。多くの知見を得た彼は、これまで培ってきた社内の研究データにとらわれず、一からガラス開発を始めることにした。

それを見守っていた川村は「前任者までは、利便性などを考えて、現場でよく使われる材料の中で可能性を探っていたのです。ところが、熊澤はそんなことはお構いなしに、自由な発想で研究を進めた。こうなったら、僕が上司としてすべきことは、彼がやりやすい環境を整えてあげることだけでした」とフォロー。その横で「空気読まなくて…」と笑う熊澤は「これまでの社内のノウハウがなければ、絶対に完成しませんでした。僕は少し変えただけに過ぎません」と何事もなく答える。

電子ペーストの
ノウハウも取り入れ
オンリーワンの赤絵具を創り出す

赤色完成のニュースは、すぐに社内を駆け巡った。食器のデザイナーや関係者が、これまでに見たことのない赤に見とれた。「でも、実際はその後が大変でした。試験管の中では赤色が再現できても、商品化をするには色が安定して出ないのです」。開発するうえではよくあること、と川村は言う。再び、熊澤の分析の日々が始まった。

しかし困った時でも、高い基盤技術を持つノリタケには、意外と近くにヒントがあるもの。川村は電子ペースト事業と連携して、分散技術のノウハウを活かせないかと考えた。事業部の壁を越えたことは、新しい知見を生み出すことにつながる。この連携によって、金属粒子のサイズ調整や絵具の中に均一に分散させることに成功し、ようやく製品化にこぎつけることができたのだった。

オレンジの絵具も赤同様に頭を悩ますものだった。これまでの研究で、オレンジ色は酸化鉄を使えばいいということが分かっていたが、実用化には程遠く、ひたすらテストを繰り返す日々を過ごす。約6年、百回以上のテストを重ね、ついに、鮮やかなオレンジを生み出すガラスの成分、酸化鉄との配合率を発見。発色と安全性を両立した新しいオレンジ絵具が完成し、江戸小紋が粋なテーブルウェアブランド「朱小紋」となって、ようやく多くの人々のもとへ届けることができたのである。

これからを尋ねると川村は「一応の区切りはつきましたが、事業としてはまだまだだと思っています」と答えた。「ノリタケの赤をもっと見てもらいたい。今は、あの日の丸の赤が再現できますから」。

働く人たちや周辺環境、そして食器を使う人たちにも安心で、美しい色を再現するノリタケの絵具。商品の裏に隠された開発の日々は、この赤のように実にドラマチックだった。

赤・オレンジ絵具を使用した商品

  • 朱小紋 AKE KOMON

    朱小紋 AKE KOMON

  • ROSA ROSSA

    ROSA ROSSA