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未来の技術を生み出す
SPECIAL
EPISODE
1

未来の技術を
生み出す

開発・技術本部 研究開発センター
粉体デザイングループ グループリーダー
2001年入社
K.M

技術や製品は、それを使うお客様のためにある。
企業の研究者として働く醍醐味。

K.Mのグループ名は、「粉体デザイングループ」という。セラミックスを使った製品は基本的に、粉状の材料を用いて作られる。その「粉」に関する設計がK.Mたちの仕事だが、これは決して新しい材料の開発のみを意味するわけではない。

さまざまな機能を持った粉体、たとえばナノ(100万分の1ミリ)レベルの細かい粒子などを取り扱う一方、セラミックス製品を作る「プロセス」のデザインにも取り組んでいる。その目的を、K.Mは分かりやすいたとえを使ってこう説明する。

「セラミックスの製造は、パン作りに似ています。どちらも粉の材料を使い、それを練ってこねて、形づくり、焼く、というプロセスがあります。おいしいパンを作るために小麦粉の品質を高める方法もありますが、良い材料を使っても作り方が良くなければおいしいパンはできません。製品が出来上がるまでのプロセスにも、大きな意味があるのです」

セラミックス製品の開発は「トライアンドエラー」の傾向がある。つまり、いろいろな方法を試しながら課題を解決していく、という進め方である。しかしそれとは異なる方法、たとえば自動車を1本のボルトやその締め方まで事前にこと細かく設計して作るように、セラミックス製品を作るための材料や添加物を設計し、さらにそのプロセスまで設計することによって、新しいアプローチで製品を生み出すのが「粉体デザイン」の基本的な考え方である。

K.Mたちのグループが実際に取り組んでいる研究テーマは実に幅広い。たとえば、「コンピュータシミュレーション」に関する研究。材料に関する原子・分子レベルのシミュレーションから、「どのようにして焼くか」「どのように成型するか」といった、プロセスのシミュレーションまで、多様な対象を取り扱っている。

また、「多孔質セラミックス材料」の研究開発も重要なテーマだ。セラミックス材料の孔(あな)を利用して、さまざまな機能を生み出すための研究に取り組んでいる。孔の量や大きさ、形状などを制御し、新たな機能を追求する。

この、「テーマの多様さ」という特徴自体がK.Mたちのグループの大きな強みで、多様な視点でアイデアを生み、場合によってそれらを組み合わせることによって、今までにない技術や製品を生み出すことが可能になる。

「ノリタケには大きく分類して4つの事業があります。私たちのいる開発・技術本部はそれらの事業部からは独立した部門ですが、私たちはほぼ全部の事業部と関わりを持っています」

こうして日々幅広いテーマに向き合うK.Mのもとには、各事業部から頻繁に問い合わせや協力要請の連絡が入る。

「こんな技術を開発できないか」

「いま、こんなことで困っているけど何とか解決できないか」

こうした依頼に応える中から新しい知見が得られ、研究の引き出しがさらに増えていく。仮に依頼内容が自分の専門外だと感じることがあっても、「できない」と断ることはほとんどない。その技術を持っていそうな部署を紹介したり、面識のある大学の研究者などを紹介したりする。人と人をつなぐことも、自分の重要な役割だと考えている。

先に紹介した「多孔質セラミックス材料」も、ある事業部との連携によって製品化が進められているものだ。ひとつのブレイクスルーを得るきっかけとなったのが、小さな「泡」。K.Mはある時、この材料を見てこんなことを考えた。

「ここにガスを通したら、細かい泡が出るんじゃないか?」

1ミクロン以下のごく小さな気泡のことを、「ウルトラファインバブル」と呼ぶ。その泡はさまざまな用途に応用できると期待されており、たとえば工業製品の洗浄や廃液処理などへの応用が検討されている。こうした泡の効果は頭に入っていたものの、多孔質セラミックス材料を使ってそれを生み出せるかどうかは、まったくの未知数。ただし、このアイデアに賭けてみる意義はあると思えた。そして実際に試してみたところ、期待していた通りの微細な泡が出てきた。

常に現場に目を向け、現場からヒントを得る姿勢。部下の取り組みを見守りながらも、必要な時には客観的にアレンジをする意識。普段から心がけていたことが、一つの形になった瞬間だった。結果を事業部に伝えたところ、「面白い」という反応があり、現在は製品化に向けてさらに開発を進めている。 研究者は、一人で仕事をしているわけではない。人とのコミュニケーションを大切にし、その過程で生じた悩みや課題を共有することによって、「まだ世の中にないもの」を生むためのヒントが得られる。

しかも自分は、ノリタケという企業で働く研究者だ。自分たちの技術はすべて、最終的にお客様の手に届き、その人に使っていただくために存在する。 「そのために日々挑戦することが、企業で働く研究者の醍醐味です。技術を届ける先には、自分の家族や友人もいます。その人のために自分の技術を役立てることが、私たちの一番の喜びなのです」

※社員の所属部署は取材時のものです。

PROFILE

PROFILE

PROFILE

研究開発センター 粉体デザイングループのグループリーダーとして、多様な要素技術の開発や商品開発に取り組む。グループ内で重視しているのは、メンバー間のコミュニケーション。豊富な会話の中から課題や問題点を把握し、その中からブレイクスルーのヒントをつかむ。若手時代の寮生活やクラブ活動などの経験が、社内の各部門とのネットワーク構築に役立っている。

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