中期経営計画
1.VISION2030(2030年度のありたい姿)
今後の当社グループを取り巻く経営環境は、地政学リスクの顕在化、保護主義の台頭、カーボンニュートラルを始めとするサステナビリティに対する意識や、心身の幸福や健康に対する意識の高まり、生成AIやDXの進展など、不確実で先が予測しにくい時代が続くものと認識しています。
2030年度を見据えた経営の方向性として策定したVISION2030(2030 年度のありたい姿)「マテリアル×プロセスの独自技術で変化する社会の欠かせない推進役へ」を実現するために、当社グループは今後の成長が期待される環境・エレクトロニクス・ウェルビーイングの3分野を成長領域と定めて「選択と集中」を進め、現状の基盤領域(内燃機関、窯業等)から成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)へ事業領域の転換を図ります。
また、成長領域への取り組みを通じて、当社グループは、「地球を元気に」、「社会を便利に」、「人と社会を幸福に」する企業を目指します。


2.前計画(第12次中期経営計画)の振り返り
2022年度から2024年度までの第12次中期経営計画では、「収益基盤の強化と成長領域への仕込み」の期間と位置づけ、「収益基盤の強化」として、不採算商品・事業の再編、収益改善・合理化を進め、「成長領域への仕込み」として、増産・拡販への対応、経営基盤の強化に取り組みました。その結果、「収益基盤の強化」は一定の成果が得られましたが、経営数値目標については当初計画時から市場環境が大きく変化したため、残念ながら未達に終わりました。
3.第13次中期経営計画
(1) 第13次計画の位置付け
VISION2030の実現に向けて、第13次計画は「成長基盤の確立」の期間と位置付けます。両利きの経営として「強固な収益基盤の構築」と「成長加速に向けた投資」を推進するとともに、事業成長を後押しする「経営基盤の高度化」に取り組みます。また、これらの戦略実行に最適な体制に事業を再編してまいります。
(2) 経営数値目標
第13次計画の最終年度(2027 年度)の数値目標は、連結売上高 1,575 億円、連結営業利益135億円、連結経常利益175億円、ROE9%以上とし、PBR1倍超の早期の実現を目指します。
(3) 第13次計画の骨子

① 強固な収益基盤の構築
成長領域への事業転換を図るため、積極的な投資による増産・拡販への対応と、新商品開発に取り組みます。また、合理化・収益改善のため、価格の適正化、原価低減とともに、老朽化設備の更新による効率化を推進します。さらに、外部連携も活用し、既存事業における前後工程への染み出しや、既存商品の新用途開拓によって、高付加価値・高収益な事業機会を獲得し、強固な収益基盤の構築に取り組みます。
② 成長加速に向けた投資
「成長加速」と位置付けた第14次計画(2028年度から2030年度)期間中の一段の飛躍に向けて、従来の事業ごとの製品起点から、新たに市場起点による、成長領域における事業横断での投資機会を探索し、戦略的企業連携(M&A・資本提携等)を進めます。
また、全従業員から広く開発テーマを募る開発テーマ提案制度とステージゲート制度により、全社一丸となって新事業を育てると同時に、これまでの自前主義から脱却し、オープンイノベーションや他社との協業により早期の新事業創出に取り組みます。
③ 経営基盤の高度化
持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決のため、サステナビリティ経営を推進し、カーボンニュートラルの実現、気候変動等のリスクへの対応等のサステナビリティに向けた取り組みを進めます。
人的資本経営の強化とDXの推進に注力し、経営基盤を高度化することにより事業成長を後押しし、VISION2030の実現を目指します。
【人的資本経営の強化】
事業戦略と連動して策定した人財戦略を推進します。タレントマネジメントシステムの活用により従業員のスキルや経験等のタレント情報を可視化し、目指す人材ポートフォリオの充足に向けて人材投資を強化します。また、働き方改革と社内環境整備に取り組み、多様な人材の役割・成果に基づく新人事制度の定着により、従業員のチャレンジ精神の醸成とエンゲージメントの向上を図り、組織風土改革を実現します。
【DXの推進】
市場や競争環境の変化にスピード感を持って対応できるよう、DXを推進します。社内データのデジタル化によって効率化・高度化の基盤を構築し、MI※の活用による開発の促進、業務フローの最適化、製販技連携の活性化などの取り組みとあわせて、中核となる DX人材を育成し、内部プロセスの抜本的な変革を目指します。
※ MI(マテリアルズ・インフォマティクス):AI をはじめとする情報科学の技術を活用し、材料開発を迅速化する手法
(4) 資本コストや株価を意識した経営
2027年度 ROE9%以上、PBR1倍超の早期実現を目標に掲げ、第13次計画を着実に遂行するとともに、「資本収益性の向上」と「市場評価の改善」に取り組みます。
【資本収益性の向上】
・事業別ROICの目標設定及び実績管理により、資本収益性を高める施策を推進します。
・成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)に向けた積極的な投資を実行します。
・政策保有株式の縮減を継続します。
【市場評価の改善】
・株主還元の拡充を実施します。
配当性向:30%以上 ⇒ 35%以上(第13次計画期間中は、一株当たり年間140円を下限とした累進配当)
機動的な自己株式取得
総還元性向:50%以上(第13次計画期間累計)
・成長戦略及び進捗状況の適時適切な情報開示、並びにIR体制の強化と個別面談の拡充を図ります。
・投資家との対話により得られた情報を取締役会に報告し、課題解決に向けた施策を実行します。
(5) 各事業別の取り組み課題

工業機材事業
オーダーメイド品事業では、市場の変化に迅速に対応するため、従来の製品別から市場別(成長領域別)に事業体制を再編するとともに、徹底した収支改善(拡販・価格適正化・OEM 活用・原価低減等)に継続して取り組みます。汎用品事業では、国内及びタイ国の製造体制の再編と整備により競争力を高め、収益改善を図ります。
また、エレクトロニクス分野を中心に成長領域向けの新商品の開発、販路の拡大、増産体制の確立に取り組むとともに、国内及び海外の販売拠点の整備、販売・製造システムの刷新を進めます。
セラミック・マテリアル事業
電子ペーストは、価格の適正化と製品ラインナップの拡充を進めるとともに、パワー半導体周辺材料への参入と量産化に取り組みます。電子部品材料は、主力の積層セラミックコンデンサ用材料の生産能力の増強とともに、製造基盤の整備と原価低減による競争力の強化を図ります。
2025年4月に印刷技術を中核とした事業ポートフォリオの再編を行いました。新たに高収益で高効率な事業基盤を確立します。
また、成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)向け新商品の開発を進めます。
エンジニアリング事業
主力のエネルギー、エレクトロニクス分野では、開発、販売、製造、品質管理体制の整備と、アフターサービス(メンテナンス・消耗品販売等)体制の確立により、シェアの拡大を図ります。
また、新しい分野(医薬、半導体、サーキュラーエコノミー)への参入と市場の開拓、成長領域(環境・エレクトロニクス・ウェルビーイング)での新用途・新商品の開発を進め、強化します。
食器事業
米国の収益改善と各国の販売体制の構築を進めるほか、環境負荷を低減する素材の採用など、新商品開発に取り組むとともに、事業基盤(製造・販売・技術)の整備を推進します。
また、ブランド力向上と新分野(インテリア・ライフスタイル等)への参入を図るとともに、今後の成長が見込まれる海外 HoReCa※市場での拡販に取り組みます。
※ HoReCa(ホレカ):Hotel(ホテル)、Restaurant(レストラン)、 Cafe / Catering(カフェ /ケータリング)の略語
■関連リンク
2025年5月9日 ニュースリリース:第13次中期経営計画策定のお知らせ