財務戦略
第13次中期経営計画では、
さらなる成長と企業価値最大化に向けたキャピタルアロケーションを実行します。
                    
2024年度の経営成績などの概況
2024年度のノリタケグループの連結業績は、売上高は1,382億円(前年比0.2%増)、営業利益は102億円(前年比4.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は129億円(前年比12.7%増)という結果でした。売上高および親会社株主に帰属する当期純利益は過去2番目に高い水準となりました。
                        2024年度は、MLCC用材料の生産能力増強、リチウムイオン電池(LiB)用焼成炉の増産対応など、2023年度の2倍を超える113億円の設備投資を実施しました。一方で、政策保有株式の売却益35億円を計上するなど、キャッシュの創出も行いました。かねてより政策保有株式縮減の方針を掲げており、取締役会で個別銘柄ごとに継続保有の適否を検証し、保有の合理性が乏しい銘柄については売却を進めました。
                        また、株主還元の強化と資本効率向上のため、2024年8月から2025年2月にかけて自己株式を取得し、3月に消却しました。これにより、総還元性向は50%に近い水準となりました。
第12次中期経営計画の振り返り
2024年度は、2022年度からスタートした第12次中期経営計画(以下、第12次計画)の最終年度でしたが、3年間で売上・利益ともに増加したものの、いずれも計画値を下回る結果となりました。これには複数の要因があったと分析しています。とくに大きな要因は、工業機材事業、セラミック・マテリアル事業の主要顧客である各業界の需要が想定通りに伸びなかったことです。また、インフレも想定以上となり、原材料、燃料だけでなく、すべてのコストが上昇したほか、社会的な賃上げの流れを受けてベースアップも行いました。一方で、価格転嫁が認められる機運も高まり、価格適正化と原価低減などによる収益改善・合理化を推進しました。中期経営計画立案時点では、想定していなかった状況が続き、著しい社会・経済の環境変化に大きく影響を受けたと捉えています。
資本コストや株価を意識した経営の推進
社会・経済環境の変化だけでなく財務面の価値観の変化も顕著でした。当社グループは長い歴史の中で、事業環境が厳しい時は緊縮と会社の保有資産の資金化などで乗り切り、長期に安定した経営を目指してきました。しかし、変化の激しい時代に対応するため、株主、従業員、環境、社会など広くステークホルダーに目を向けた企業経営が求められるようになりました。資本を効率よく活用して成長投資を行い、収益を増やし、株主に還元し、社会に新しい価値を生み出すような企業が求められています。当社グループが変革を決意したのは、このような社会の価値観の変化に合わせ、安定企業ではなく成長企業となり、企業価値向上を続けていける会社となるためです。
                    資金調達においては、前提となる成長投資の資本収益性を十分に吟味した上で行っていきます。株主還元と成長投資をバランスよく行い、将来の収益性や成長性に対する株主の期待感を醸成するなど、資本コストや株価を意識した経営を推進いたします。
                    経営指標としてはROE(自己資本利益率)が重要視され、自己資本を過剰に膨らませることなく利益を増やすことが重要であると考えています。不採算商品をなくし、事業再編により固定費と管理コストを下げるという当たり前のことを、資本効率を意識しながら行っていきます。さらに、投資によって成長性が見込める事業、商品の開発を、スピード感をもって行っていく必要があります。
第13次中期経営計画のキャピタルアロケーションと株主還元
第12次計画期間における当社グループの営業利益は、年間100億円規模となり、かつての利益水準を大きく上回りました。当社グループは、長らく投資を抑制してきたため、この生み出したキャッシュを原資に、老朽化した生産設備や施設の更新も推進します。新しい設備を導入し、合理化、効率化を図るとともに、増産、DX化などを進め、収益を獲得できる体制に変えていきます。
                    第13次中期経営計画(以下、第13次計画)においては、営業キャッシュフローに加え、有利子負債による調達や政策保有株式の縮減によって得られる資金を原資に、成長投資として全体で350~500億円を見込んでいます。新事業開発に向けた研究開発関連投資、M&A、資本提携などにより新規領域の事業化を加速するためにも、しっかりと資金を充てていきます。
                    このような成長戦略を実現していくためには、社員のエンゲージメント向上も重要です。リクルートの観点も踏まえながら、給与水準向上と育成強化のための人的資本への投資も拡大していきます。
                    第13次計画期間中の株主還元については、配当性向を5%引き上げて35%以上を目安とした累進配当を実施するとともに、機動的に自己株式取得を実施し、計画期間累計の総還元性向を50%以上とする計画を掲げました。
ステークホルダーとの対話の拡充
この5年ほどで、当社の株価は約2倍に上昇しており、国内外の投資家の皆さまから注目していただけるようになりました。皆さまとの対話の機会を重視し、決算説明会や個別インタビューなどを年間100件ほど行っています。これらの機会から得るものは非常に大きく、資本コストの想定や株主還元の水準などを議論していく中で、当社の現在の姿に見合った指標を定めることにも活用させていただいております。第13次計画では、ROE9%以上、PBR1倍超の早期実現を目標に掲げ、事業戦略を着実に遂行することで、資本効率および企業価値の向上を図ります。
                    ノリタケグループは、さらなる成長を追求していくという強い決意のもと、大きな変革をスタートしました。ステークホルダーの皆さまには、ご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。



